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フランクルのロゴセラピーと森田療法

2021年1月4日

この記事のポイント

※ロゴセラピーと森田療法の共通点

・自分以外の物を志向させる療法である

※ロゴセラピーと森田療法から分かること

・人間は自分自身以外の物のためにある

不安の克服

人間は生まれたときから不安なのです。

これは分離不安と呼ばれる不安です。

母親から離れるという不安を人生で一番初めに受けます。

ここから人間の不安の生活が始まるのです。

しかし、発達途上において、両親や周りの人間と過ごして行くうちに不安は徐々に解消されていくのです。

解消されない場合は神経症と呼ばれる病気なのです。

この病気は自分のことに執着しすぎている場合が多いのです。

人が不安や心配をしている時は自分自身のことを過度に意識し過ぎているということを理解しなければなりません。

この不安の克服のための心理療法にフランクルのロゴセラピーと森田療法が挙げられます

この二つの心理療法には共通点があります。

それは自分自身以外の事や物に目を向けさせることなのです。

フランクルのロゴセラピーでの心理療法

不安、心配、恐怖を克服するには、ロゴセラピーでは、反省除去と逆説的志向という二つの治療法があります。

反省除去(dereflexion)

過度の自己反省、過度の自己観察は神経症を発症してしまいます。

人間は自分自身のことに意識を集中すればするほど心理的に追い込まれて、不安が助長してしまうのです。

つまり体の調子が狂ってしまうのです。

人間は自分自身のためにあるのではなく、自分以外のもののためにある、というのが真実なのです。

自分のことに集中しなければ、すべてはうまくゆくのです。

自分のことに集中しない方法は何でしょうか?

それは、自分以外の何か別のものに意識を向ける必要があります。

これは何でもいいのです。

大体忙しく仕事で働いている時には、自分のことを考えている暇はないのです。

仕事という対象物に人間の思考が集中していれば、自分自身へと意識が、戻ることはないのです。

フランクルの心理療法における反省除去では、自分以外の物,

例えば、或る物、或る仕事、ある人物、或る思想等自分が価値のあると思われる事物に自分を志向させて自己の過度の自己反省、過度の自己観察を除去することを行うのです。

人間の自己観察防止策として一番良い対象物は何か、

それは自分の好きなものに目を向けさせのが最もいいのです。

このことが一番良い反省除去法となるのです。

このことは人間は自分自身のためにあるのではない、という基本的事実を示すものです。

逆説志向(paradoxical intention)

逆説的志向とは恐怖や不安になる対象物を、患者に逆にもっと志向するように患者自身が自らに言い聞かせるという手法です。

この逆説的志向が患者の自分自身の中にある、ユーモアを引き出し症状を緩める、という心理療法なのです。

患者は自分自身のことを、ユーモアによって笑い飛ばすのです。

このユーモアーが恐怖や不安と自分自身を分離させ、自分自身を客観的に見ることが出来、自分自身を客観的にコントロールすることが出来るようになるのです。

つまり自己超越ができるようになるのです。

例えば、セラピストが広場恐怖症の患者に、自分はもっと広いところに行って倒れてみよう、と患者が患者自身に言い聞かせることを提唱します。

うすると、患者自身の恐怖が、自分のユーモアによって、自己を超越し症状が消えるのです。

自己超越は実存の本質である。

このフランクルの反省除去と逆説志向を考察すると、人間とは、基本的に自分自身を以外のものを志向する存在であり、自分自身を超えることができる存在であることがわかり、また人間は、自分のためにあるのではなく、自分を超えた何かのためにあるのだ、ということが分るのです。

フランクルは

自己超越が実存の本質である。 

意味への意思 V・E・フランクル ブレーン出版p61

自己超越性は実存の本質です。 

絶望から希望を導くために V・E・フランクル 春土社 p86

と言っています。

フランクルの主張である「自己超越は実存の本質である」というのが、真実なのであり、このことが正に人間を人間らしくするものに違いないのです。

森田療法

日本にも神経症の治療法があります。それが森田療法です。

森田療法とは森田生馬により創始された精神療法です。

森田療法は神経症の治療に用いられますが、その治療法は「あるがままに」現状を受け入れることにあります。

要するに不安はそのままにして現実の生活をしていくことが、神経症を克服する唯一の道であるとするのです。

森田療法における作業療法は神経症の症状と共にあるがままに現実の生活をしていくという治療法なのです。

現実の生活をしていく間に、意識が自分ではなく、現実の生活のことに向けられて行き、徐々に神経症の症状がなくなっていくというのです。

つまり意識を自分以外の世界に向けさせるのです。

ロゴセラピーと森田療法の共通点

この意識を自分以外の世界に向けさせるということことは、フランクルのロゴセラピーと同じ療法であると言えます。

フランクルのロゴセラピーの「反省除去」の治療法でも自分以外のものに目を向けさせる、例えば自分のことは考えずに、今ある仕事等に打ち込むことを推奨しています。

要するに自分自身以外のものを志向すれば、神経症は消えるということなのです。

東洋でも西洋でも神経症の治療は、自分以外のことに目を向けさせることが重要であることになります。

確かに、神経症の治療はただ単に意識を外に向けさせればいいわけではありません。

身体的な要因でも神経症は起こるので、薬物療法も合わせて実際には行っています。

フランクルはロゴセラピーの逆説的志向や反省除去法と合わせて薬物療法も行っています。

これをフランクルは心身的同時療法と言っています。

森田療法でも最近は薬物療法を施しているので、森田療法でも心身的同時療法が行われているのです。

人間は自分自身以外の「何か」のためにある

これで、人間は自分以外のものを志向する存在であるということが神経症の治療面で証明されるのです。

人間は自分のことを考えすぎると、神経症という病気になってします。

自分以外のことを考えることが、本来人間に与えられている使命なのです。

 人間の五感と言うものを考えてみると、五感はすべて自分自身以外の物のために作られていることが分かるのです。

例えば、人間の眼球というものを考えてみると、人間は自分で自分の眼を見ることはできません。

自分の眼が見えるとすれば、眼球の中の浮遊物である場合(飛蚊症)や白内障などの目の病気なのです。

すなわち目の病気の時に初めて、自分自身の眼の中が見えることになるのです。

このことから分かることは、人間の体は本来、外の世界と関係を持つように、作られており、人間自分自身のためには作られていない、ということなのです。

人間は自分自身以外のもの、例えば、ある物や、ある人や、ある価値等を志向するものなのだ、と言うことがこれで分るのです。

人間が生きているということは、自分以外の外の世界に対して目を向けて、何かを志向して生きていく、ということであり、自分が世界に対して、何ができるのかということを、「神」から期待されているということなのです。

人間はこの世界に対して、自分に何ができるのかを常に考え、常に正しく行動に移していかなければならないのです。

自分は自分自身のためにあるのではない、ということが真実なのです。

自分ではない何か、誰かのために、究極的には、「神」のために自分があるのです。

ですから、「神」のために生きるということが最終的に、与えられた人間の使命なのです。

人間は自分のことに執着している限りアセンションはできません。

自分を超越しない限り常に失敗に終わるのです。

メモ

参考文献・・・森田療法入門(白揚社)

志向された苦悩だけが苦悩でなくなる

フランクルや森田療法は神経症の克服を自分以外の「何か」を志向して治療に導きました。

フランクルはさらに人間の苦悩に対しても言及しています。

志向された苦悩だけが苦悩でなくなる。

苦悩の存在論 V・E・フランクル 新泉社 p125

と言っています。

さらに、

苦悩を志向しうるには、苦しみを超越しなければならない。いいかえると、私が何かのために、誰かのために苦しむときにのみ、私は苦悩を志向することが出来るのであり、意味豊かに苦悩することが出来るのである。それだから、もし苦悩が意味豊かに満ちたものであるべきだとするなら、それは自己目的となってはならない。そうなると苦悩する、また犠牲となる心構えはマゾヒズムに転化するだろう。意味豊かな苦悩とは、「・・・のための」苦悩である。

苦悩の存在論 V・E・フランクル 新泉社 p126

と言っており、自己目的でなく、何かや誰かのために犠牲となることが出来れば、人間は苦悩を超越し意味豊かに苦悩することが出来るのです。

人間が苦悩するには苦悩する能力をまず、決断によって獲得しなければなりません。

この能力が、フランクルが精神の反抗力、精神の抵抗力、精神の反発力と言っているものなのです。この能力を獲得するために人間は精神的次元の上昇を目指さなければならないのです。

人間は精神的次元の上昇が出来れば、苦悩も喜んで受け入れることが出来るようになるのです。

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