ココがポイント
ユーモアは人間誰もが持っている自己超越の能力です。
笑う門には福来る
「笑う門には福来る」という言葉があるように、本当に笑いは「福」を呼び寄せます。
笑いの最近の研究から、
- 自律神経の活性化で交感神経と副交感神経のバランスを取りそれによる病気予防
- ドーパミン(幸福感)・エンドルフィン(鎮痛作用)・セロトニン(脳の活性化)の分泌を促す
- NK (ナチュラルキラー)細胞の活性化による免疫力の向上
- 腹式呼吸によるリラックス効果
といった様々な効果があることがわかってきました。
フランクルはユーモアによって神経症を笑い飛ばす療法を行いました。
それはフランクルのロゴセラピー療法の一つである「逆説的志向」という療法です。
フランクルはこの逆説的志向によるユーモアによって人間の自己超越の能力を引き出し神経症を治療するのです。
フランクルはユーモアは人間の自己超越の能力であることを指摘しています。
ユーモアは精神的次元に人間が入ることのできる架け橋となるのです。
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ユーモアーによる広場恐怖症の治療
神経症の中に、広場恐怖症というものがあります。
広場恐怖症患者は広いところに出ることを恐れます。
しかしフランクルは敢えて患者に広いところに行って倒れるようにと「逆説的志向」を指導します。
例えば患者に、
「今からあなたは開き直って、広いところに行って皆の前で倒れてやろう」
と自分自身に言い聞かせて実行してみてください。
と言います。
患者の精神の反抗力の力の度合いにもよりますが、一瞬患者は自分自身を笑うことができます。
これはユーモアが自分自身を引き離し精神的次元から自分自身を客観的にみることができたためです。
この一瞬でも自分を笑うことができた時はもう恐怖症は回復しているのです。
この一瞬とは人間がリベットの自由意志を行使できる瞬間の、あの0.2秒のことです。
関連記事・・・人間の自由意思とは何か
この0.2秒の一瞬で自分がロボットではなくなるのです。
つまりこの0.2秒で自分自身を笑うことができた時、神経症という人間の制約に対抗する、精神的次元における意識の中の力である、精神の反抗力による態度変容という、本当の人間の自由意志の行使ができた時なのです。
自分が恐怖に思うことを自ら進んでやってみると思うこと、つまり恐怖に自らを逆説的に追い込むことによって、そこにユーモアが生まれ、患者は自分で自分自身のことを客観的にみることができるようになり、自らを笑うことが可能となるのです。
患者が自分のことを客観的にみることができると、精神の反抗力(精神反発力、精神的拮抗作用という呼び方もあります。)が起こり、文字通り恐怖症を笑い飛ばすことができるのです。
フランクルは、
逆説的志向が適応されれば、それはいつでもより深いところで、何かが起こっているのである。丁度、恐怖症が意識の表面下で形造られるように、逆説的志向もより深いところで影響力を表すのである。ユーモアを含んだこの方法が形成されてゆくその根底には、存在への基本的確信の回復という事実がある。何が起こるかは、基本的に行動パターンより以上のものである。つまりそれは実存の転換である。
現代人の病 V・E・フランクル 丸善株式会社 p189
と言って、逆説的志向は人間の精神の反抗力が恐怖症に対する実存の転換つまり、精神的態度変容を人間に与えることを強調しています。
現在の心理療法の中でフランクルのロゴセラピーはあまり広く浸透しているよいうには見えません。
しかし、このことは、個人個人の精神的な次元の上昇過程のレベルの違いによる効果が問題になっているのだと思われます。
精神の反抗力が段階的に一から十まであると仮定して、人間それぞれの段階にあるため効果が分かれるのだと思うのです。
人間の精神的レベルを上げていけば効果は上がるものと信じるのです。
0.2秒の自由意志にはオリンピック選手になるのと同じように、日々日々精神的次元の次元向上に励む必要があるのです。
ユーモアは自己超越の能力
ユーモアーは自分自身を引き離し客観的に自分を見ることができようにする効果があります。
このことはユーモアによって人間が自己超越の能力を引き出し行使したということなのです。
ユーモアーによって恐怖症を克服するにはある程度の精神的次元の上昇が必要です。
フランクルの逆説志向はすぐに効く人と効かない人が出るようですが、このことは精神的次元のレベルを上昇していけば必ず逆説的志向は有効な療法になるのです。
逆説志向の精神的次元のレベルを上昇させる方法は、ユーモアのセンスを磨くことです。
このことは、ユーモアは自分自身を精神的次元に置き、物事を客観的にみることが出来るようにするためです。
そのことによって人間の精神的次元上昇に役立つのです。
フランクルは、ユーモアについて、
実際、逆説的志向はいつでもできる限りユーモラスな方法でおこなわれるべきである。ユーモアは、本当に明白に人間的現象である。つまり、どんな動物でも笑うことはできないのである。それ以上に重要なことは、ユーモアは人間に見通しをもたせ、彼自身と彼が直面する何ごととの間にも距離を置かせるのである。同じ理由によって、ユーモアはまた、人間に自分自身から自分自身を分離させ、それによって自分自身に対する最大限のコントロールを達成させるのである。人間の自己分離の能力を活用するということが、逆説的志向が基本的になしとげることである。
意味への意思 V・E・フランクル ブレーン出版 p129
逆説的志向はいつも可能な限りユーモアな方法で作られるべきなのです。ユーモアはじつのところ、明確に人間らしい現象であります。結局、動物は笑うことはできません。それよりもさらに重要なことは、ユーモアは人間に見通しをもたせ、自分と対峙するものとの距離をとらせます。同じように、ユーモアは自らを自分自身から引き離し、それによって自分を最大限制御できるようにするのです。自己分離という人間がもつ能力を活用することは逆説的志向が基本的ににたっせいすることなのです。
絶望から希望を導くために V・E・フランクル 青土社 p167 (意味への意思 V・E・フランクル ブレーン出版増補版)
と言っており、この自己分離の能力(自分自身を自分自身から引き離す能力)すなわち、人間の自己超越の能力を逆説的志向が引き出しているとしているのです。